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徒花まみれの心臓 ~ifストーリー~

第3章 肺呼吸の不得手な君へ











「あー、疲れたわァ」


「隊長何もしてへんですやろ」


「何言うてん、ただ立っとくだけでも疲れるんや」


流魂街に現れたギリアンの掃討任務を終え、その帰りに市丸を連れて甘味処へ入る。藍染は副隊長会議があると言って早々に帰ってしまった。市丸と二人で話すいい機会を得た。自分が引き入れたからと言って、藍染は市丸の世話役を買って出たため、この少女の側には常日頃藍染が側にいる。二人きりになったのは初めてだった。窓のを見ながら、ちらりと横目で市丸を見る。真央霊術院をたった一年で卒業し、現在五番隊の第三席に就くこの小さな天才少女の実力が見たくて、今日の虚退治は手を出さないでおいたが。


「お前、鬼道上手いな」


斬魄刀の能力や使い熟しもさることながら、鬼道の才に溢れたこいつに、素直に褒める。味方を鬼道でサポートし、そして自分よりも年上の隊士達にそれとは気づかれないように花を持たせる。この少女のこういうところが、他隊士達から好感を得て受け入れられているのだとは知っていても、この歳でそんな気遣いができてしまうこの少女が可哀想だと思った。日々気を遣いながら過ごすなんて、疲れるだろうに。


「鬼道が一番得意なんです」


「せやろな。その歳で七十番代詠唱破棄できるて何やねん。末恐ろしいわァ」


茶を啜りながら思う。あの藍染が五番隊にこの少女を引き入れた。そこに何か意図があるのかもしれない。警戒はせずとも、注視はしなければならない。けれどその前に、隊長として、この少女を知らねばならなかった。子供のくせに、気を遣って生きにくそうにしているこの少女を、お節介な自分はどうにも放っておくことができない。


「五番隊以外からも引く手数多やったろ。他んとこ、どこから声かけられた?」


「ん、と。一番隊と六番隊、十三番隊と鬼道衆、やったかな」


「鬼道衆ゥ!?」


「私もびっくりですわ。鬼道衆入るん、相当難しいて聞いてたんに」


一番隊は分かる。あの隊は年寄りが多いけれど、市丸がどんなに強かろうと僻むことなく隊士全員が孫のように市丸を可愛がることだろう。総隊長のジイさんも恐らくそこらへんを配慮して引き入れようとしたに違いない。


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