第3章 真っ白な少女と烏たちの出会い
結局その日は練習にはならなくて、私は帰り道がたまたま同じだった日向くんと歩いている。
「ごめんね。練習邪魔しちゃって。」
「…白銀さんさ、『逃げた』って言ってたじゃん?あれ、どういう意味?」
あの試合が今でも鮮明に思い出せる。もう、私の声は届かないと分かってしまったあの瞬間が。
「…おいおい話すよ。ほら、仮入部だしいつでも話す機会はあるしね。」
はぐらかすことで自分を守らなければ。私は弱いんだから。
日向くんはそれ以上何も聞いてこなかった。真っ暗な道をただ黙って2人で歩いていた。
「…日向くん、私そこの家だから。」
「ほぉぉ!!でっけぇー!!」
確かにこの辺だと大きい方だ。東京じゃ当たり前になってたけど。
「話、聞いてくれてありがとう。また明日ね。」
「白銀さん!」
「!!」
門を開けて中に入ろうとすると、日向くんに名前を呼ばれた。
「白銀さんは『化け物』なんかじゃないよ!あー、えっとー、上手くは言えないけど、凄い能力だと思う!白銀さんがバレー部入ってくれたらすげー強くなりそう!」
じゃあな!
そう言って日向くんは自転車にまたがって走っていった。その後ろ姿はとっても眩しかった。
真夏の太陽はツンドラの心を溶かしていく