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悪魔様の言うとおり

第2章 生命尽きるまで


それから。



1年。






1度は心臓も止まり、誰もが諦めていた朧の命。
それは奇跡的に目を覚ました。
呼吸器のアラームで駆け付けたスタッフは、慌ててドクターを呼びに行き。
すぐに呼吸器は、外された。
痰つまり、あるいは誤作動だと思われたアラームは、朧の自発呼吸による抵抗によるもの。
栄養も排泄も管理されていたのが嘘のように。
朧は嚥下機能も問題なく、もちろん排泄機能もクリアした。
今までの病状が嘘のように。
彼女はみるみるうちに回復していったのだ。





「お世話になりました」






リハビリも無事終え、まだ足元が覚束ない朧の腕には松葉杖。
1年後、朧は病院から退院した。
不思議なことに、呪いはすべて消えていて。
朧の身体は産まれて初めて、自分だけのものとなった。
朧に掛けられた呪い、それは死ぬまで消えぬ呪い。
心臓が止まった朧はきっとあの時、死へと足を踏み入れた。
その後で、息を吹き替えしたのだ。
死者を生き返らせる………そんなことが出来るのは限られている。



「………ルゥ、会いたいよ」




朧はひとり。
真っ青な青空へと向かい目を閉じた。












『朧』





聞こえるのは、忘れることなど出来ない優しい声。







『朧、愛している』



「朧もルゥが大好きだよ」








八神。
神を切り裂く意をもつ、八神家。
八神家は代々贄となるべく存在していた家系。
朧もまた、産まれたその瞬間からその不幸な宿命を背負っていた。
朧の身体に掛けられた呪い。
歳を重ねる毎にそれは力を増し。
起き上がることが出来なくなるまでにそう、時間などかからなかった。
『死』して苦しみから解放される。
朧はそんな運命のもと、産まれた。
『死』を受け入れなかった人物が、ひとり。
朧の母親は娘の死を受け入れられず、魔にすがった。
誰でもいい。
娘を助けてほしい、その、一心で。
悪魔はその願いを、聞き入れた。
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