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徒花まみれの心臓【BLEACH】

第26章 こんな僕では君を掬えない






















仮面の軍勢に特訓してもらっていたある日、平子と二人で話したことがある。俺がこれまでの事をざっくりと話しながら、平子が静かにそれを聞いていて。話終わった頃に、ふと、平子が重い口を開いて、訊いた。


---銀色の髪で、ニコニコ笑って、京都弁で話す女と会ったか。


そう訊ねられ、真っ先に思い至ったのは、刀が伸びるあの女。会ったと答えれば、今まで適当に聞いていたくせに、その女との邂逅について真剣に話を聞く平子。


「……どう思った、あいつと接して」


「どうって…そんな関わってはねえけどよ。気味の悪い奴だと思ったぜ。へらへら笑ってるくせに苦しそうなんだよ、市丸って奴」


双極の丘で、市丸は夜一さんと砕蜂って隊長二人と互角に戦っていた。刀すら抜かず、体術と鬼道だけであの二人を相手に優勢だったことは記憶に新しい。その強さもさる事ながら、あいつが去った後のことも、平子に話す。


「あいつ、白哉に紐みてぇなモン渡したんだ。その紐がバカみてぇな霊圧放って白哉の傷を治してた。冬獅郎の怪我も、あいつのお陰で死なずに済んだって聞いてる」


訳わかんねえよな。呑気に呟いた俺に、平子は、顔を片手で覆って何も返してはくれなかった。


「---そうか」


あいつ、相変わらずやなァ。それだけ言って、平子はまた無言になる。


「市丸って奴と知り合いなのか?」


無関係ではないだろう。触れていいものか、少し悩む。けれど、あの飄々とした平子にこんな顔をさせる市丸という女との関係に、少し興味が湧いた。


「……ただの昔の知り合いや」


大切なモン、増えたみたいで、安心したわ。言って、少し笑った平子は、何故だか泣きそうに見えて。


「あんたのその顔、あの時の市丸って奴とそっくりだぜ」


「……やかましいわボケ」


ただの昔の知り合い、なんてものではないのだろう。平子の過去は未だ教えてもらえていないが、なんとなく予想はつく。浦原さんや夜一さんと同じで、かつては死神として護廷に居たのだろう。なぜ死神を嫌うのかは知らないけれど。



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