第25章 うつろう絶望へ
着々と進められる市丸サンの報告。状況だけではなく、藍染サンの性格や考え方を交えたそれに感心する。彼女の口によって暴かれる藍染サンの目論見。王鍵の創生とは、また随分と大それた事を成そうとするものだ。空座町のレプリカを創り入れ替えるという結論に至った時、それから、と彼女が言いにくそうに口を開いた。
「旅禍の女の子…井上織姫て子、気を付けておいた方がええです。藍染隊長、彼女にえらい興味を示してはるから」
「井上サンに…?」
「私は彼女ん能力よう知らんのやけど、なんや特殊みたいやね。能力それ自体が目的なんやなくて、多分、餌にするつもりやと思います」
黒崎サン達をおびき寄せるための囮。若しくは他の目的を以ってして、彼女が狙われる可能性が高いと市丸サンは言う。
「……浦原喜助。井上織姫のことを注視しつつ、万が一あの童っぱが向こう側に捕らえられた時は何もするでない」
「…彼女を見捨てると?」
「そうではない。相手の戦力が隊長格よりも上である可能性が高いのなら、無駄な犠牲を出す訳にはいかん。…市丸」
「承知しとります。あの子がこっちに来た時は私が守りますわ」
「うむ。これにて今日の話は終わりじゃ。…浦原喜助、お主の恨みつらみは後でゆるりと聞こう。一番隊舎で待っておるぞ」
言って、総隊長が退室する。残されたのは僕と市丸サンの二人きり。妙な沈黙が場を支配する。
「…恨みつらみ、私にもありますやろ」
喰えない笑みを浮かべ、彼女が言う。気丈に振る舞ってはいるが、僕には叱られるのを恐れる子供にしか見えなくて。
「恨みつらみねぇ…ま、それは総隊長サンにぶつけるとするっス。それよりも僕は、アナタに訊きたいことが山ほどある」