第25章 うつろう絶望へ
「来たか、浦原喜助」
またこうして瀞霊廷に足を踏み入れる日が来るとは思わなんだ。総隊長の元へと向かいながら、少し懐かしい気持ちでその変わり映えの無さに安堵した。隊首会議に用いられる部屋には、僕と総隊長の二人だけ。藍染サンとの戦いについて、これから話をするのだろう。
「それで、アタシに話とは?」
「暫し待て。もう一人揃うておらん」
「もう一人…?」
恐らく今から話される内容は重大な話であるはずだ。此処へ呼ばれるということは、誰であろう、夜一サンだろうか。しかし総隊長は僕に連絡を寄越した際、彼女を呼ばなかった。ならば京楽サンだろうか、あの人は切れ者であるし、総隊長も彼の事を随分と信頼している。はて、と思案していたその瞬間、時空が歪む気配を感じ、そこに杖を向ける。穿界門だ。警戒を解かず、そこから出て来る人をただじっと待つ。開いた瞬間、姿を現した人物に、僕は開いた口が塞がらなかった。
「何故アナタが此処に…!?」
市丸愛美。数ヶ月前、藍染サンと共に反逆したはずの彼女が、何故。
「遅い」
「無茶言わはりますなァ…藍染隊長の目ェ掻い潜って抜け出すの、ほんま大変なんですよ?」
混乱する僕を他所に、総隊長は彼女を捕らえる訳でもなく、呑気に会話をしている。これは一体、どういうことなのだろうか。総隊長に視線を送ると、総隊長は重い口を開いた。
「市丸は儂の命令で藍染側についておるのじゃ。敵ではない」
「それは………いつからっスか?」
総隊長の命令で藍染サンの元に付き従っているという話を、すぐさま信じられる筈もなく。なぜなら彼女は、百年前のあの夜には既に藍染サンの部下として僕達を切り捨てた。彼女が慕っていたはずの平子サンさえもその手で見捨てたのだ。
「市丸が護廷に入隊した時からじゃ」
「---!」