第3章 穹を蒼とするならば
「雛森チャン?」
「っ、市丸隊長!」
「ん? なんですの ?」
「あ、あの「こんな所に居やがったのか」…っ! 日番谷君!」
愛美隊長って呼んでもいいですか?……思い切ってそう尋ねようとした言葉は、突如現れた幼馴染みに遮られてしまった。
「お、日番谷クンやん」
「テメェ市丸……、まさかとは思うが俺との約束を忘れてんじゃねえだろーな」
「…………………………あっは、」
「やっぱりな…」
二人の間で交わされる会話についていけない。
「あの、約束って…」
「日番谷クンとね、十番隊舎で一緒にお茶する約束してはったんよ。朝まではちゃんと覚えてたんやけどねぇ…かんにん、怒ってはる?」
「…いや、別に」
「「(完全に拗ねてるよ…)」」
長い付き合いだからわかる。こうなったシロちゃ……日番谷君は、中々に厄介だ。今日は一日中不機嫌のままだろう。…でも、日番谷君も何だかんだ言って市丸隊長のことが好きだし、案外市丸隊長相手なら機嫌もすぐに良くなるかもね、なんて自分で思ってみたら……ああ、十分有り得ることだった。
「日番谷クン、ほんますんません。もし君がええなら、今からでも一緒にお茶しまへん?」
「…仕方ねえな、付き合ってやるよ。でもお前が煎れろよ。行くぞ」
「ふふ、わかったて」
何よシロちゃんってば。仕方ないとか言いながら、本当は嬉しいくせに。―――っああもうずるいずるい! 市丸隊長を独占するつもりなんだね、シロちゃん。良いなあ、隊長同士って。
「雛森チャン、最後まで特訓付き合えんなって堪忍な、」
「! …あ、いえ、気にしないで下さい!」
本当はもっと一緒に特訓してほしかったけど、そんな我儘は言えない。相手は隊長格だし、お忙しい方だ。何より市丸隊長が困ってしまうから。この人と藍染隊長、シロちゃんにだけは迷惑をかけたくないんだ。
「あ―――あの! 市丸隊長!」
仕事に支障を齎すような迷惑には多分ならないと思う。だから、さっき言いかけたこと……言ってもいいかな?