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徒花まみれの心臓【BLEACH】

第3章 穹を蒼とするならば








「……君臨者よ 血肉の仮面・万象・羽搏き・ヒトの名を冠す者よ 蒼火の壁に双蓮を刻む大火の淵を遠天にて待つ 破道の七十三 双蓮蒼火墜!」


凄まじい威力の蒼い爆炎が視界を埋め尽くす。こんなにキレイな爆炎が敵を攻撃するための炎だなんて勿体ない。…今この破道を放った麗人が、以前そう言っていたのをふと思い出した。


「双蓮蒼火墜はこないな感じや、雛森チャン。蒼火墜と差ほど変われへんから、“鬼道の達人”て謳われとる君ならきっと一発で出来ると思うんやけど……自信ん程はどや?」


「で、ですが、私など“鬼道の天才”と謳われる市丸隊長にはまだまだ及びません!」


「かい(可愛)らしいなあ、雛森チャンは。意地悪言うてかんにんな? ほんでも、君はあっちゅう間に私を追い抜くやろーし」


ふわりと花が綻び咲くような、そんな市丸隊長独特の微笑み。みんなはこの綺麗な微笑みを少し不気味だというけれど、私にはそれが不思議でならない。こんなにも綺麗で、真っ白で、無垢な微笑みを浮かべる人なんて市丸隊長以外に見たことがないくらいなのに。


三番隊隊長、市丸愛美。
藍染隊長と同じくらい、私が憧れてやまない人。



「ほな、やってみよか」


「っはい! ―――君臨者よ 血肉の仮面・万象・羽搏き・ヒトの名を冠す者よ 蒼火の壁に双蓮を刻む大火の淵を遠天にて待つ! 破道の七十三 双蓮蒼火墜!」


威力のある蒼い爆炎。成功したんだとホッとすると同時に、少しだけガッカリする。私の爆炎は市丸隊長の爆炎のように澄みきった蒼ではなく、見る者全てを恍惚とさせるような美しい炎でもないのだ。


「ほうら、いっぺん見せただけやのにこん威力。雛森チャンが私ん代わりに“鬼道の天才”を謳われはる日もそない遠くはないやろね」


頭を撫でられながら褒められ、自然と顔が赤くなる。―――何故この人はこんなに美しいのだろう。顔だけじゃない、内面も動作も、全てが存在する何よりも美しい。そこまで考えて、ハッと気づく。―――嗚呼、そうだったのか。市丸隊長の放つ双蓮蒼火墜の綺麗な青い炎は…市丸隊長だからこそ、なんだ。私や、他の誰がやってもあの青い炎はただの青い炎でしかない。けれど、この人が―市丸隊長が放てば、それは青い聖火と成り得るから、だから。


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