• テキストサイズ

徒花まみれの心臓【BLEACH】

第22章 仕様のない既視感が首を絞める
















---ほな、乱菊の誕生日は私と出会った日やね


懐かしい夢を見た。私が愛美に見つけてもらって、一緒に過ごした幼少期のある日の夢。あの頃から、秘密主義で隠し事の上手な子だった。行き先を告げずにどこかへ消えてしまう悪い癖も、誰にも頼らず一人で抱え込む悪い癖も、相変わらず健在で。


藍染の反逆から数日が経つ。半壊していた瀞霊廷も随分と修復した。戦いの傷も癒え、穏やかな日常は既に始動している。私は、まだ先に進めていない。


「松本、お前に客だぜ」


十番隊舎であの子について考えていると、日番谷隊長から声をかけられる。隊長が連れてきたのは、あの子が大切にしていた副官の吉良だった。ぺこりと頭を下げた吉良は、意外にもしっかりとした足取りをしている。あの子に一番懐いていたから、もっと落ち込んでいるのかと思っていたけれど。


「あの、乱菊さんにお願いがあって、」


「あら、珍しいわね。なーに?」


ここ数日の間に何が起こったのか、教えていただけませんか。その言葉に、私も日番谷隊長も息を飲む。そんなはずはない。だって、私と日番谷隊長は、四十六室で吉良の姿を見かけて、確かにその姿を追った。私に限っては、吉良と戦った。


「…あんた、覚えてないの?」


あの子が裏切ったという事実を直視できず、記憶が改竄されているのかもしれない。


「いえ、それが…覚えていないも何も、僕はずっと意識を失っていたんです。…恐らく、市丸隊長が僕を眠らせていた」


「どういうことだ?その話が本当だとして、なんで市丸がそんなことをする必要がある?」


「…市丸隊長は、僕を守ってくれたんだと、思います」


そうして吉良から語られる、意識を失う前の話。とてもじゃないけれど、信じられなかった。あの子が吉良を守ったというのは分かる。私達の追っていた吉良が偽物だとは思えないけれど、あの子は鬼道の才に恵まれているから、それを駆使して何か細工をしたのだと言われれば、納得はできる。寧ろ日番谷隊長との戦いで雛森を殺そうとしたことの方が信じられないくらい。吉良曰く、私が防ぐことを見越した上でのことだったらしいけれど。そうではなくて、私が驚いたのは、あの子が吉良に隊首羽織を"預けた"ことだ。


/ 135ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp