• テキストサイズ

徒花まみれの心臓【BLEACH】

第21章 きっと最後の賭けだった






ぼんやりとする意識の中で、思い出す。隊長就任祝いに私が彼奴にあげたこの薄桃色の髪紐を、彼奴は使いたがらなかった。上質すぎて勿体無いと言って、戦いで汚したくないと言って。ならば汚さないようにすれば良い、兄が更に強くなれば良いとその時私は言ったように思う。彼奴がその言葉に従ったかどうかは分からないが、これをつけ始めたのは、彼奴が他人と距離を置くようになってからだ。どんな意図でつけたのかは、知る由も無い。ただ、離れてしまっても、それをつけてくれているという事実に安堵していた。(今は、それも、私の血で染まってしまったが。)反膜に包まれ、空へと登っていく彼奴の姿を見つめ、そして目を閉じる。終ぞ裏切った理由は訊けなかった。


「兄様…?なんだ、これは…!?」


瞬間、身体が何かに包まれたように暖かくなり、傷が自然と塞がって行く。視界が明瞭になり、呼吸が随分と楽になる。(この霊圧は、)彼奴が先程私に返した髪紐から、膨大な霊圧が噴き出し、私の傷を治している。私が抱えているルキアまでも、その優しい光の中で包まれて。


私を、全ての死神を裏切ったというのに、どうして兄はこうして甘さを見せるのだ。記憶の中で、愛美が優しく微笑む。裏切るならばもっと手酷く裏切って、甘さを見せるな。私がそう言えば、恐らく彼奴は困ったように微笑むのだろう。




















きっと最後の賭けだった
(彼奴が残した薄桃色の髪紐が、光を失いその役目を終える。血に染まったそれを、力の限り握り締めた)





/ 135ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp