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徒花まみれの心臓【BLEACH】

第21章 きっと最後の賭けだった




先程の泣きそうな顔とは一転しいつもの喰ぬ笑みを浮かべ、彼奴が軽々と雷光咆を裂いた。兄様、兄様と、ルキアが私を呼ぶ。腕の中にその存在をしっかりと抱き締めながら、ぼやける視界で、あの白銀を追う。夜一と砕蜂隊長2人を相手にしながらにこにこと笑う彼奴が、一瞬の隙を作る。夜一の蹴りをくらい、こちらに飛ばされてきた。すかさず攻撃をしかける夜一を、彼奴が伏せたまま六杖光牢でその動きを止める。そして立ち上がり、私の方を見た。


「あらら、重傷やないの」


蹴りかかる砕蜂隊長を片手で受け止め、鎖条鎖縛でその身を拘束する。鎖の切れ端を持ち、遠心力で砕蜂隊長を護廷の者に飛ばした後、愛美は私の手に何かを握らせた。そのまま、両手で手を包み込まれる。何だ、これは。薄桃色の紐のような物が、私の血で赤く染まっていく。


「これ、返すね」


---嗚呼、これは。随分昔に私が彼奴にあげたものだ。髪紐代わりにリボンを用いる彼奴のために、特別に用意したそれ。


「さいなら、白哉クン」


「そこまでよ」


私の手から、愛美の手が離れる。その瞬間を狙っていたかのように、松本乱菊が彼奴の手を掴んだ。


「……すんません藍染隊長、捕まってもた」


周りの者には目もくれずこちらを観察していた藍染は、不敵な笑みを浮かべたまま、そろそろ時間だ、と呟いた。視界がますます悪くなる。血を流しすぎてしまった。身体に力が入らず、不可抗力でルキアにもたれかかる。手の中にあるものを決して離さぬようにと、力を込める。ルキアも、彼奴が置いていったものも、手放してはならないと直感した。


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