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徒花まみれの心臓【BLEACH】

第20章 きみの最低を忘れない














ルキアちゃんへの"意地悪"を終え、三番隊の隊首室へと戻る。自分の執務室であるはずなのに、ここへ足を運ぶのも久しい。風呂に入り、死覇装を着る。そして"市丸愛美"の痕跡を残すものを、ここで過ごした思い出ひとつひとつを、丁寧に、すべて処分した。藍染隊長には許可を取っているため、監視はされていないだろう。彼独特の霊圧は感じない。万が一の為に結界も張ってある。ここには、いまは私一人だけ。


すべてを処分したのは、すべてが終わった時の為だ。総隊長は恐らく、私が任務を果たした時に、私を三番隊隊長として復帰させようとするだろう。四十六室が全滅している今、全ての権限を持つのは総隊長だ。恐らく、それは実現する。けれど私は三番隊隊長に戻るつもりは毛頭ない。そもそも、生きて此処に戻って来れると思っていないのだ。あの藍染隊長を相手にしているのだ、良くて相打ち、悪くて死ぬ。鏡花水月が効かないからといって、解き方を知っているからといって、一筋縄でいく人ではない。とうの昔に覚悟はしている。だから、後任の人の為にも、私を慕ってくれたイヅルの為にも。私が此処に存在していたという証を残してはならないのだ。


縁側の先にある庭園で、思い出を燃やす炎が揺らめく。それを見つめながら、これからのことを考える。藍染隊長の裏切りがみんなに知れてしまう前に総隊長の元へ赴かなければ。今後の確認をしなければならない。そして、最後に、あの場所へ行こう。平子隊長を裏切って、そして、甘さを棄てた、あの場所へ。机の上に置いた、髪紐代わりに使っている薄桃色のリボンを手に取る。これも、本当ならばあの炎の中に入れて、一緒に燃やさなければならないのだろう。


「……まだ、できひんなァ」


苦笑を零して、そのリボンで髪を結ぶ。ここ最近、彼の---白哉クンの霊圧が不安定であることは感じていた。藍染隊長は、ルキアちゃんから崩玉を抜き取ったあと、恐らく用済みとなった彼女を殺そうとするだろう。その時、私は阻止できるだろうか。先程"意地悪"をした際に彼女の首輪にはちょっとした仕掛けを施しておいたため、ちょっとやそっとでは死なないとは思えど。藍染隊長の実力を良く良く知っているからこそ、不安は常につきまとう。


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