• テキストサイズ

徒花まみれの心臓【BLEACH】

第19章 夜はつめたく世界を統べる




松本と市丸の視線が交わる。この2人は幼馴染みであったはずだ、互いに大切に思っていることは知っている。互いに一歩も引かず、とうとう松本の刀身にヒビが入る。ハッと市丸に意識を戻し、刃を元の形に収めさせんがために攻撃をしようとした瞬間、その刀は大人しく引かれた。無言のまま立ち去ろうとする市丸を反射的に引き止める。


「…私を追うより、五番副隊長サンをお大事に」


背中を向けられているため、その表情は見えない。しかしその声は、嫌という程に冷たく、感情がこもっていなくて、ゾッとする。喉に何かが張り付いたように声が出せなくなる。(そんな冷てぇ声出せんのか、)市丸の霊圧で、あいつの左腕を凍結させていた氷が溶かされていく。指先を伝ってポタリと落ちる雫をそのままに、数歩進んだあいつは、ふらりと瞬歩で消えてしまった。


「……松本」


雛森の側に駆け寄り安否の確認をする。取り敢えず目立った外傷は見当たらない。安堵の溜め息を吐いたところで、己の副官に声をかけた。市丸が立っていた場所を見つめながら、唇を噛み締める松本の姿に、そっと目を伏せる。


「………昔からそう、…あんた一体、何考えてんのよ………愛美」


その声が震えていることには、気付かないフリをした。









夜は冷たく世界を統べる
(俺の知っているあいつはもういない。きっと、あいつが変わったあの日に、死んでしまったのだ)







/ 135ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp