第18章 終わらない今が苦しい
「今のうちに言っておくぜ…。雛森に血ィ流させたらいくらテメェでも容赦しねえ」
「そら怖い。悪い奴が近付かんようによう見張っとかなあきまへんなァ」
風が吹く。髪を結んでいるリボンの先が首裏を擽ってむず痒い。隊長就任祝いの際に、六番隊長サンが私にくれたものだ。私には似合わないであろう、薄桃色の上質なリボン。これだけは、どうしても未だに棄てることができずにいた。
「………俺は」
難しい顔をした彼が、ポツリと言葉を零す。
「お前を信じて良いん、だよな?」
「……信じたらあかんよ」
貼り付けた微笑が消える。目をスッと開いて、彼を見据える。信じてはいけない。誰も彼も、この状況では信じてはいけない。十番隊長サンは動揺に揺れる目を一瞬閉じて、そして目を開く。そこには、覚悟が映っていた。視線を交えて、どのくらいの時が経っただろうか。ふと視線を外した彼は、瞬歩を使ってどこかへ消えてしまった。
終わらない今が苦しい
(まだ、始まったばかりだと云うのに)