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徒花まみれの心臓【BLEACH】

第18章 終わらない今が苦しい




感情のままに斬りかかってきた彼女を、イヅルが止める。ふと上を向くと、柱に高々と突き刺さった鏡花水月。みんな、刀一つにこんなに騙されている。(私には効かへんのやけどね、)私には鏡花水月の催眠が基本的に効かない。あれは"敵"を騙す能力だ。私に効かないのは、私が彼を完全に"敵"として見ていないから。彼に情を覚えてしまった私の甘さが、皮肉にも私を救っている。そして藍染隊長が、私を"敵"だと認識していないから。だから、私には効かない。私と彼が、どちらか或いは互いに敵であると認識した時、恐らく私も催眠にかかるのだろう。その解き方も、知ってはいるけれど。


「退けっていうのがわからないの!?」
「ダメだというのがわからないのか!」


2人の争いがヒートアップしている。こんな所で始解をしてしまうほど、周りが見えなくなってしまっている。そろそろ止めなければならない。十番隊長サンの霊圧を感じながら、私は指先を2人に向ける。


「縛道の六十一 六杖光牢」


右手の縛道はイヅルに、左手の縛道は雛森チャンに。2人は縛道に拘束され、こちらを見る。そう言えば、同時に片手ずつ詠唱破棄で鬼道を放てるのは古今東西私しかいないらしい。二重詠唱とはまた別物なのだそうだ。鬼道衆の面々に驚かれたこともあるが、そんなに難しいことだろうか。


「そこまでだ」


十番隊長サンが2人の間に割って入る。そして私に厳しい視線を投げかけ、2人を牢に連れて行くように隊士へ指示を出した。すれ違いざま、雛森チャンに涙を溜めた目で睨まれる。ああ、…胸が痛い。そっと、彼女の頭に手を伸ばす。


「---ごめんな、」


ちゃんと、笑えているだろうか。目を見開く彼女を見ながら、無言詠唱で彼女を眠らせる。今は精神が不安定であるから、眠らせておくべきだろう。今度こそ連行された2人を見送り、十番隊長サンに向き直る。


「すんませんなァ十番隊長サン。うちのモンまで手間かけさせてもうて」


「市丸、テメー…雛森に何をした」


「錯乱してたみたいやから、眠らせただけですわ」


チリ、と、彼の霊圧が肌を刺す。このように、明から様な敵意を向けられるのは初めてだ。(嗚呼、漸く私を敵として認識してくれたんやね、)


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