第15章 些か過去とは異なります故
「あらら、…ちょーっとあかんなァ」
そう笑いながら刀を振り下ろしたのは、百年前より大きくなった三番隊隊長・市丸愛美だった。
(儂が居った頃は白哉坊と同じくらい小さかったのにのぉ。市丸があれほど大きくなっておるということは、白哉坊も相当大きくなっておるじゃろうて)
「ばいばーい」
―――…平子真子に、果たして伝えるべきなのだろうか。百年という永い年月が、市丸愛美という死神を大きく変えてしまったことを。自分を裏切った市丸を、それでもこの百年ずっと気にかけていた平子。平子が語っていた市丸という死神が、演技なのかそうでないかは自分には分からないけれど。平子は人を見る目がある。だから、恐らくは。
(…昔のあやつをよく知っているわけではない。が、ああも不気味に笑う奴じゃったろうか?)
百年前の自分は二番隊隊長で、市丸は五番隊第三席。上位席官だという点において考えてみれば、接点があってもおかしくはないのだが……市丸と会話らしい会話をしたことは、これまでに一度もない。
「…なぁ、夜一さん」
市丸愛美について悶々と考え込んでいると、一護から声を掛けられる。
「斬魄刀が伸びるさっきの女のこと……教えてくんねーか?」
「! ……何故じゃ」
「い、いや、何でかって訊かれたら……答えらんないんだけどよ………、…何か気になるんだ」
私も気になりますと井上が賛同する。敵の情報を知るつもりなのではなく、あくまでも“市丸愛美”という一人の死神のことを知りたがっている一護と井上。かく言う自分も、市丸の顔が頭をチラついて離れない。……市丸とは昔から接点がなく正直どうでもよい存在な筈なのに、どうしてここまで気にするのか。…きっと平子真子の影響だろうなと、浅く溜息を吐いた。
「あやつの名前は市丸愛美。護廷十三隊の三番隊隊長で、特に鬼道に関しては突出した才がある。故に“鬼道の天才”という二つ名まであるような奴じゃ」
「…鬼道の天才……」
「…あの喜助でさえ、鬼道に関しては市丸に劣ると認めた程じゃ」
「「「「!!」」」」