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徒花まみれの心臓【BLEACH】

第14章 欠落貴女を壊すのは




「私を見てくれ」


愛美の瞼をなぞる。……欲しい物ほど手に入らぬ、とはよく言ったものだ。瞳の奥に憎しみしか抱いていなかったこの子が、平子真子により変わっていく。そして、平子真子が消えてしまってからの日々………絶望のどん底にいたこの子を救い上げたのは、朽木白哉だった。それをただ見ていることしか出来なかった私。面白くなかった。懐柔することには慣れているが、この子は私の本性を知っているためにそれも出来ず。泣いているこの子を、私の所為であるとしても、私が慰めたかった。私のすることは結果的にいつも愛美を泣かせてしまう。この子を愛している。けれど、愛なぞに無縁な私はその想いを伝える術を知らなくて、あの頃は愛美を傷つけることでしか表現出来ずにいた。否―――今も、それは変わらない。だが、この子をこうして腕の中に収めることが出来るようになった。この子に、私に対する情を沸かせることができた。


「……まさかこの私が誰かを愛するようになるとは、ね。君には敵わないよ」


この子は私を殺そうとしている。未だ冷めやらぬ激しい憎悪を胸中に秘め、私の一瞬の隙を狙っている美しい―――…白い、毒蛇。けれど私は知っているよ、愛美。君は愚かな程に優しい人だ。故に私をあっさり切り捨てることが出来ないということを、私はちゃんと解っている。


「………あ……ぜ、ん………たい…………ちょ……」


「おやおや」


次は私の夢でも見ているのだろうか。私の方へと擦り寄ってくる愛美に笑みを零し、そのあどけない寝顔に口付けを落とす。










欠落貴女を壊すのは
(いつだってそう、この私だ)









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