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徒花まみれの心臓【BLEACH】

第12章 Hole in my heart




「……あんたが朽木隊長から離れていった本当の理由は分かんねぇけど、でも…。名前さえ呼んでくれないんすか?何時からかあんたは吉良と乱菊さん以外の奴を名前で呼ばなくなった。さっきだってそうだ、俺のことは“六番副隊長サン”、朽木隊長のことは“六番隊長サン”………市丸隊長、あんた一体……どうして、」


あの日棄てたものに付随して、変わったことがもう一つ。私は自分の副官であるイヅルと幼馴染みの乱菊以外は名前で呼ばなくなった。…勿論藍染隊長は名前で呼ぶけれど、人前では必ず席次呼び。呼ぶ時はその人の席次で。譬え心の内といえど必ず席次で呼ぶように、徹底した。そうすることで出来上がった難攻不落の壁。最初の頃こそその壁を崩そうと試みた人もいたけれど、何時しか誰も崩そうとはしなくなった。どんなに頑張っても崩れないから。どんなに頑張っても、私が突き放したから。だからもう、誰も。


「呼び名っちゅうんは、口に出すと、そこに何かしらの無意識が出るモンや。例えば君、さっき私呼ぶ時"渋々"隊長て付けたやろ。そういうんが出てまうんよ」


図星だったのか、気まずそうな顔をして黙り込む。こういうところがまだまだ若い。


「ほな私は潰れた人ら介抱しに行くけど、君はどないする?」


「………………俺はもうちょい此処で酔いを冷まします」


「そ。話し相手んなってくれてありがとうな、六番副隊長サン。君ほんまに面白くて素直でええ子やね、…彼が気にいるんも分かる気ィするわ。ほな」


「…え、ちょ、誰が誰を気にいるって!?」


どこまでも鈍い彼を無視して部屋に戻る。そこは既に死屍累々。案の定酔い潰れたお馴染みのメンバーを放置で他の人達はお酒を楽しんでいる。うわぁと苦笑いを零しつつ部屋の中に入ると、むわっと香るお酒の匂い。


「おや、市丸じゃないか。今まで何処に行っていたんだい?」


十三番隊長サンと話していた藍染隊長が目敏く私を見つけ、わざとらしく尋ねてくる。一緒に飲もうと言う十三番隊長サンの誘いをやんわりと断って、近くに置いてあった毛布を乱菊にかけながら言った。


「ちょっと、この上で月見酒しとりました」


「風情があるね。今日は確か…三日月か。君のことだ……これから酔い潰れた彼等を各隊舎に送り届けるんだろう」


「…流石、よう分かってはりますね」



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