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徒花まみれの心臓【BLEACH】

第10章 すべてを取るなんて許されない



















いつの間にか日もすっかり暮れてしまい、白哉クンと一緒に瀞霊廷に帰る。あの場所には何かあるのか、とか、そういうことを一切何も聞かないでくれた白哉クンはやっぱり優しい人だ。…もしかしたら全て知ってたのかもしれないけれど。将又興味が無いだけかもしれない。彼は不器用だけど優しい人だ。……だけど、これ以上彼の優しさに依存してはいけない。ケジメをつけなければならない。恐らく、もうすぐなのだ。藍染隊長の計画が実行される。この半端な気持ちでは、私が失敗してしまう、だから。


「ほんなら白哉クン、ここで」


三番隊舎まで送ってくれた彼に礼を言い、相変わらず無表情な彼に微笑をひとつ。
あの日の絶望から私を救ってくれたのは白哉クンだった。最初こそ邪険に扱われていたが、それでもやはり優しかった白哉クンは、私を気にかけてくれて。遊ぶ回数を重ねる度に自然に笑える様になって、ここまで立ち直れた。乱菊とはまた違う形で、大切な人だと思えた。…そう考えると、私と白哉クンは幼馴染みと呼べる関係なのかもしれない。


覚えている。初めて会った日も、大声で罵り合いながら喧嘩した日も、隊長就任祝いに初めて一緒に盃を交わしたことも。いつから側にいることが当たり前の様になったのかだけは、思い出せないけれど。


恩人とも言える彼から、平子隊長と同じくらい大切な彼から、私は離れなければならない。今日、平子隊長へ花を手向けたその瞬間に、そう思った。棄てるのならば平等に。情も何もかも、隠し通してしまおう。―――…もう覚悟はついてる。


「………愛美、どうかしたのか」


察しの良い彼は、私の些細な変化に気付いてしまう。


「……白哉クン。私な、君には感謝してるんよ。君にそのつもりがあらへんのは分かってるけど、あの頃ん私を救ってくれたんは君やった。…ほんま、ありがとう」


“市丸愛美”として彼に接するのはこれで最後にしようと決めたのだ。これからは馴れ馴れしい態度をとらず“、三番隊隊長”として接するから。


「…兄を救った覚えなどない」


「せやから言うたやん、君にそのつもりはあらへんやろうけど・て。…自己満足やから気にせんでええよ。ほな、私、三番隊に顔出すつもりなんで、ここでさいならしよか」


「………」


「―――さいなら、白哉クン」


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