第2章 積もる愛しさは永遠の秘密
護廷十三隊三番隊隊長、市丸愛美。常に浮かべている微笑みは少しの不気味さを感じさせるものの見る者全てを虜にし、その独特な儚い雰囲気は自然と人を寄せ付ける。容姿端麗……そのような言葉では足りない。彼女を言葉で表すには、どの言葉も当て嵌まらない。その容姿と実力から女性死神はもちろん男性死神からも支持を得ており、三番隊に志願する人は多い。加えて市丸自身があまり口うるさくなく飄々としているため、職場環境が良好であることも有名だ。
「みんなどうしたんだ? 市丸が此処に来ることは確かに珍しいことだが、俺と市丸はこう見えて結構仲がいいぞ?」
「ふふ、歳は離れてるんやけどね。浮竹隊長はとってもいい人やからさ、一緒にいて落ち着くんや」
「! 何だか照れるな、」
手を口に当ておしとやかに微笑む愛美に、少し照れくさそうに笑う浮竹。十三番隊の中で「白髪コンビ」と密かに称されている二人のツーショットを自分の目で見れたことに、隊員たちは心の中で涙を流した。そんな隊員たちの様子に一切気付かない二人はほのぼのと会話を繰り広げ、お茶を啜りながら、穏やかな空気を作り出している。「そういえば」と愛美が思い出したかのように話を切り出した。
「処に来はる途中、白哉クンにばったり会ってね。私が十三番隊に行く言うたら、白哉クンも浮竹隊長が心配やから見に来はるってさ!」
「白哉が…?(絶対市丸と俺を二人きりにさせたくなかったからに決まってる)」
「さっきから白哉クンの霊圧が此処に近づいてきてるし、あとちょっとで来はると思うよ」
その三秒後―――六番隊隊長・朽木白哉が襖を開けて入ってきた。彼は四大貴族の最高位である朽木家の現当主、流石に断りもなく襖を開ける無礼なことなど…と浮竹は思っていたが、その考えはたった今見事に打ち消されてしまった。
「…………」
「あ、きたきた白哉クン。いらっしゃ~い」
「……兄は少し危機感を持て」
容易に男と二人になどなってはならぬと小さく白哉は溜息混じりに言った。それを聞いた俺は苦笑するしかない。
「おいおい、止してくれ。俺はそんなこと考えちゃいないよ」