第2章 積もる愛しさは永遠の秘密
十三番隊隊舎では、いつものように穏やかな空気が流れていた。隊長である浮竹十四郎の人柄を表しているかのような優しく穏やかな空気。病弱な浮竹は大抵床についていることが多いのだが、今日だけは違った。何でも、“客人”が来るという。客人とは一体誰なのであろうかと不思議に思いつつも、きっと京楽隊長辺りだろうなと予想していた隊員達は皆、その“客人”を見た瞬間、目を見開いて固まることになる。
「浮竹隊長、お邪魔します~」
「ああ、入ってくれ」
ニコニコと微笑みながら入ってきたのは、あの三番隊隊長の市丸愛美。入ってきた人物が意外過ぎて、(色々と)油断していた隊員達はすっかり固まってしまう。何しろ三番隊隊舎と十三番隊隊舎はかなり離れているため、一番隊や二番隊、三番隊の隊員は滅多に来ることがないのだ。
尤も、隊員全員が固まっている理由はそれだけではないのだが。
「今日はみたらし団子です、薄味なんでお体に支障はあらへんと思うんやけど…」
「わざわざありがとう。君が持ってきてくれる菓子はいつも美味しいからね、毎度楽しみだよ」
「あら、そらうれし。…ほんで、えらく隊員達が静かやんなぁ」
その言葉に、浮竹は周りの隊員達を見る。全員が固まっており、こちらを凝視していた。
「どうしたんだみんな、いつものように「「「「「っ市丸隊長ー!」」」」」…うん、いつも通りだ」
「市丸隊長、何故貴女様のような方がこのような所に!?」
「本物!? 本物の市丸隊長!? 何これドッキリ!?」
「夢なら覚めろ、あ、でもこれはこれでいいかもしんねえ。やっぱり覚めるなよ~!」
「っ間近で見ると更にお綺麗ですわ! どうすればそんなに美しくなれますの!?」
「………うーんと、取りあえず浮竹隊長。見てへんで助けてくれへん?」
「ああ、すまないすまない! みんな落ち着け、市丸が困っているぞ」