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徒花まみれの心臓【BLEACH】

第7章 そっと小さな声で「  」ってね











流石にもうすぐ誰か来そうですからと言って藍染隊長を退室させ、身形を整える。その際零れた大きな溜息の理由(わけ)は知らんぷりだ。髪の毛を高い位置で結う。お気に入りの、瞳と同じ色のリボンがくすんできたなあなんて考え、そうしてまた大きな溜息を一つ零して四番隊舎を出た。卯ノ花隊長には一応置き手紙を置いてきたからきっと大丈夫、…なはず。あの人を怒らせると怖いことは、四番隊に世話になったことがある人なら誰でも知ってる。いやね、本当さ、冗談抜きで怖いから。


「……っく…、」


歩いた振動が腰にきて、到頭その鈍痛に耐えることが難しくなり少しだけ壁に背を預けて休憩する。痛みが収まってきた頃合いを見計らい再び歩き出した。五番隊である藍染隊長が知っているということは、きっと全隊に私のことは広まっているのかもしれない。これ以上誰にも心配をかけないよう、早く仕事に戻らないと。


「愛美……!?」


「……乱菊、…やっほー」


「こんのっ……やっほーじゃないわよ馬鹿! あんたまだ顔色悪いし足元も覚束ないし、まさか抜け出してきたんじゃないでしょうね?!」


よたよたと歩いていると、驚きと怒りに満ちた声を響かせた幼馴染みに見つかってしまった。…どうしよう、よりによってこの状態で乱菊に見つかるなんて。足元が覚束ないのは成るべく腰に振動が伝わらないようにするためですなんて死んでも言えない。


「そない怒らんとってや。 これから三番隊に戻って顔出して、阿散井クンと檜佐木クンとルキアちゃんに詫びに行こ思うてたんよ。乱菊は何でこんな所におんの?」


「っあんたの見舞いに来たに決まってんでしょ! はぁ……………ちょうどいいわ、久しぶりに少し話すわよ。拒否権ナシ!」


「ひゃっ……!」

手首をがっしりと掴まれたかと思うと、瞬歩で三番隊の隊首室へと連れていかれる。


「え、乱菊……話すって、此処で?」


乱菊は私の箪笥を漁りながら違うわよと言った。私の下着から着流しから何まで取り出した乱菊は、それらを私に押し付けて眉を顰める。


「……風呂入ってきなさい」


「―――っ!?」


「相手は訊かないわ。でもね愛美、……分かる人には直ぐに分かるのよ、」


    匂いだけで。


「……っ………、堪忍な、ありがとう」




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