第9章 西国見聞録
「………に、しても…」
マジマジと覗き込まれる。
「?」
「お前、ベッピンだな」
男はニヤッと口角を上げる。
「…まぁ…お兄はんも、男前ですわ。
…買われてあげてもええですよ?ぅふふふ」
袖口で口元を隠して笑う瑠璃を、
男は目を丸くして意外そうに見た。
そして、可笑しそうに笑った。
「ハッ、お前、怯えてんのかと思ったけど…良い度胸してんなっ。
気に入ったぜ」
怯えは見せない。それが瑠璃だ。
瑠璃はまた町中を歩いていた。
男と一緒に。
「そうなんですか。
堺は大筒(大砲)を作っているんですね」
感嘆の声音と共に、男を見上げ、
キラキラとした瞳を向けた。