第17章 ダウト
「…どうしてそんな顔してる」
『……』
「何か言いたい事があるのか、俺に」
『ううん、ないよ』
「……俺は」
そう言いかければまたしても背後に現れる彼女、しかし今度は俺の氷結を避ける事なくすぐさま触れて飛ばしてしまう。
予想外な行動にまた慌てて大きな氷塊を生み出せば、それに突き飛ばされて勢いよく後ろに転がっていく彼女。
そのままよろめきながら立ち上がる彼女はすでに肩で息をしていた。
「俺はあるんだ、お前に言いたい事が、聞きたい事が…」
このままではいつまで経っても終わらない試合に、覚悟を決める。
「たくさんある」
『…』
「だが、今はこれで終わりにする」
ふらつく彼女に最後のとどめとして、
人一倍大きな氷生み出し彼女へと向ける。
『まだだッ!!』
勢いよく氷が彼女に向かっていけば、希里が声を荒げる。
『轟くんッ!!!』
突然後ろから聞こえた彼女の大声に、すぐさま振り返れるもそこには誰もいない。
(まずいッ!)
瞬時に罠だと理解し、あたり見渡すが彼女どころか先ほど彼女に向けた氷塊すら跡形もなく消えている。
(…?!)
刹那、自分の頭上から妙な気配がする事に気づきすぐさま空を確認する。そこには先ほど自分が生み出した氷塊が自分めがけ落ちて来るのがわかり、思わずヒュッと喉がなる。
このまま逃げるにも時間が足りない、だとすれば攻撃で防ぐしかない。
落ちて来る氷塊を割るように新たな氷を生み出せば、パラパラと氷の割れた結晶が降り落ちて来る。
しかし安心したのもつかの間、また次々と隕石のように氷が自分をめがけ落ちて来るではないか。
なんとか回避しようとその場から逃げるが俺を追い落ちて来る氷に逃げ場を封じられ、どんどんあたりを囲われていく。
何度も落ちてくる氷塊を散らしていけど、間入れずに次の氷塊が俺を襲って来る。
先ほどから何度も俺の攻撃を誘っていたのはこのためだと気づき、このままらちがあかないとすぐに悟る。
そしてそんな事を考えているうち全身から汗が吹き出せば、左側がジリジリと温まっていく事に気づき思わず失笑してしまう。
(希里…お前も緑谷も本当に変なやつだ…)