第17章 ダウト
そのまま湧き出る感情に身を任せ、疼く左側から勢いよく炎を生み出す。
ボウッと炊き上がった炎はステージ一体を瞬時に包み、俺をめがけ落ちていた氷塊もろとも一気に溶かし尽くす。
そのまま溶けた氷は液体となり、ステージ全体を雨のように振り始めた。
氷雨はすでに冷えていた俺の体に容赦無く降り注ぎ、また左の個性を使い己の体温をあげた。
『…ハア…ハア…』
一瞬の氷雨がやめば、中央に床に手をつき荒い呼吸を繰り返している希里がいるのが見える。
静かに彼女へと歩いていけば、俺に気づいた彼女がゆっくりと顔をあげた。
俺が見えているのかさえ怪しい意識朦朧とした様子の彼女は、先ほどの雨で同様にびしょ濡れで小刻みに震えている。
濡れた前髪から覗く光のない瞳は以前とは違い、
俺から溢れる炎の光を写しキラキラと輝いていて。
その瞳がひどく美しく見え、俺は静かに息を飲んだ。
『と、どろき…く…ん』
そして俺が最後に手を下す前、彼女は眠るように目を閉じれば力尽きた体が床へと倒れ転がった。
「希里さん行動不能、轟くんの勝利ッ!!」