第17章 ダウト
◇◇
朦朧とした意識のなか痛みが全身に響けば、目をうっすらと開ける。
どうやら轟くんとの試合後、そのまま保健室へと運ばれたらしい僕は包帯とギプスで身体中を巻かれている。
なにやらリカバリーガールとオールマイトが話しているようだったが、僕には彼らの会話を聞き取れるほど余裕はなかった。
「「「「緑谷!!」「緑谷ちゃん!」「デクくん!」「緑谷くん!!」」」」
するとどこからともなく保健室に押し寄せた皆が、勢いよく僕を名を呼ぶ。
どうやら僕の様子を心配してきてくれた飯田、麗日、蛙吹、そして峰田に答えようと、なんとか声を絞り出した。
「み、みんな…次の試合は…?」
「ステージ大崩壊のため、しばらく補修タイムだそうだ」
「さっきの試合怖かったぜえ緑谷…あれじゃあプロも欲しがんねえよ…」
震える手で峰田に言われれば、思わず自分の腕と体を見下ろした。
「うるさいよほらあ!心配するのはいいが、これから手術さあね!」
「「「「手術ぅ!?」」」」
大げさに騒ぎ慌てふためくみんなの姿を見れば、彼女の姿がないことに気づく。
(希里さん…)
そんなことを考えながら、僕は再び意識を手放した。
◇◇
「塩崎さん場外!希里さんの勝利!!」
「しゅ、瞬殺やわあ…」
「うむ…」
ステージが修復されすぐさま続行された試合。
第二回戦が始まれば否や塩崎のツルを避けながら、飛び回る希里。
そうして気づけば塩崎の死角に飛び込んだ彼女は、いともたやすく塩崎を場外へと飛ばしてしまった。
思わずびっくりして声を漏らす自分に、飯田くんも横で同じく頷いた。
(しかしなんで轟くんとデクくんの試合が終わった途端消えちゃったんやろトバリちゃん…)
無表情で塩崎にお辞儀をし会場を後にする彼女の背中をみながら、頭をかしげる。
それからというもの、いくら待てど控え室を除いても希里が現れることはなく。
そのままどんどんと過ぎていく時間。
そしてついには最後の爆豪対切島の試合が終わってしまえば、希里を含んだベスト4が出揃った。
しばらく次の試合まで観客席で待機していれば、不安定な足取りで観客席へと上がってきた緑谷。