第16章 グラビティ
「みんな将来に向けて頑張ってる…ライバルなんだよね。だから、」
顔をあげ、精一杯の笑顔を掲げながら拳を突き上げる麗日。
「決勝で会おうぜ!」
震える体を奮い立たせるように、しっかりと声を張り上げる彼女のきれいな丸い瞳がこちらを見た。
『お茶子』
そんな姿の彼女を見ていれば自然と体が動き、思わず彼女の拳を掴む。
『決勝で待ってる、負けるんじゃないよ!』
「トバリちゃん…うん、待ってて!!」
麗日とお互い目を合わせれば大きく頷く。やがて私の手を離した彼女の背中を見送りながら私たちは目を合わせ、彼女の検討を祈った。
「第一回戦、最後の第8試合スタートダァ!」
…
…
そうして幕を開けた麗日対爆豪の試合は、予想以上の波乱を巻き起こした。
圧倒的な実力差を前にしてもめげずにしがみつき、爆豪を翻弄した麗日であったが、あえなく最後の最後で意識を失ってしまった彼女。
彼女の悔しさを想像すればまるで自分自身の事のように感じられ、いてもたってもいられずにすぐさま控え室へと降りていく。深呼吸してノックのあとドアの扉を開ければ、すぐさま顔をあげる麗日。
『お茶子?』
「あ、トバリちゃん!」
予想以上にあっけらかんと返事をした彼女に、思わず拍子抜けして彼女をまじまじと見てしまう。
『お茶子…お疲れ』
「いや〜負けちゃった!ごめんね約束したのに」
『もう、謝ることじゃないでしょ』
すぐさま彼女の隣の席へと腰を下ろせば、相変わらずえへへと軽く頭をかく麗日にホッと胸をなでおろす。
その後同様に麗日の様子を見に来た緑谷もまた彼女のあっけらかんとした態度に度肝の抜かれれば、そのまましばらく会話を続ける私たち。
「…っちゅーわけでそろそろ始めようか、第二回戦!!!」
会話の途中、マイク先生の実況が聞こえてくれば皆目を丸くする。
「あ、もう!?」
『あっという間だったね』
「じゃあ、僕はいくね…」
第二回戦の予告を聞けば、そろそろ出番の緑谷が緊張気味にいう。
「ああデクくんごめん!私らがおって全然準備が」
「あ、ああ全然大丈夫だよ」
なんだか思うところがある緑谷の表情は少し曇りがちで、緊張とはまた違う感情を抱く彼。そのまま重い足取りで出口へと向かう彼に、声をかける。
『緑谷くん…みんなで応援してる』