• テキストサイズ

私が死のうと思ったのは【ヒロアカ夢】

第16章 グラビティ


「…うん!ありがとう」

力強く返事を返せば、そのまま私たちを残して彼は控え室を後にした。

それじゃあ私たちも観客席へと戻ろうかと、麗日に問いかければ彼女の携帯が着信で振動しているのに気づく。

「あ、ちょっとごめん…」

『あ、うん…』

そう言いながら少し困った表情で電話に出れば、
とうちゃん、と口にした彼女。

これはここにいてはだめだな、とその様子を見て空気を読みその場を後にしようと椅子から立ち上がる。しかし出口へと向かおうとする私の上着をツンッと引っ張った麗日に気づき、振り向き彼女を見下ろす。

(いて欲しいのか…?)

どうしていいかわからず掴まれたまま呆然と立っていれば、淡々と話す麗日を見守る。

「…惜しくもないよ…すごくもない…あそこからの打開策、なんもあらへん状態やったし…完敗…」

いつもより方言が強めの彼女の声が揺らぎ始め、私の上着を掴んでいた手が震えた。それに気づき咄嗟に彼女のに自分の手を重ねれば、麗日は弱々しい力で私の手を掴んだ。

「…………だって、早く私父ちゃんたち……」

そう涙声で言い残せば、彼女の瞳から大粒の涙がこぼれ始め、私は握る手の力を強めた。あんなにあっけらかんとしていたのは私たちを心配させないためだと、やっと気づいた感の悪い自分にすぐさま後悔する。

悔しくないわけ、ないよな。

涙を流しすすり泣く彼女の頭を、握っていた反対の手で優しく撫でれば、そのまま私の腰へと頭を預ける。押し殺していた声は徐々に誤魔化せなくなっていき、私へと顔を埋めればわんわんと声をあげた始めた麗日。

そんな彼女に私はただずっとそばで、頭を撫ででやることしかできなかった。

◇◇


『お茶子、これ濡れタオル』

「うーありがとう、トバリちゃん」

なんとか泣き止んだところに彼女が濡れたタオルを持ってくれば、そのまま慣れた手つきで私の腫れ上がった目へとタオルを当てた。迷いのない希里の手つきに思わずえへへ声が漏れれば、不思議そうな彼女の声が聞こえた。

『え、なんかおかしかった?』

「ううん、
なんか会ってまもないのトバリちゃんに頼りっきりだなあって」

『そんな、私だっていつもお茶子に助けてもらってるんだ。おあいこだよ』

「あはは、まるでお姉ちゃんができたみたいやわ」

『…』

/ 155ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp