第14章 ➖甘い取引➖
「おや?お目覚めですか。
顔色は先程よりいい様ですね…
サラ御気分はいかがですか?」
片手にトレーを持ち
その上には水差しとグラス
近くの机にそれを置き
水をグラスに注ぎ、私に手渡してくれる
ソレを受け取り水を口にした後
彼へと答える
『ん…まだなんか怠いかも…
えっと…私ジェイドの部屋になんで?』
この部屋の主であろう…
ジェイドへと問いかけていた…
彼は空になったグラスを受け取り机へ置く
「覚えていませんか?
焦点も合わずフラフラとした足取りで
貴方は廊下で僕とすれ違い、そして…
そのまま倒れてしまったんですよ?」
そう言われ、思い返してみる…
音楽室でアズールと…
彼に何か言って逃げる様にして去った事を
微かに思い出した…
『…あぁ…なんとなく?
ごめんね。記憶が少し曖昧みたいで…。
あの…ところで、着替えは誰が…?』
「そうですか…。着替えですか?
着替えでしたら僕がしましたよ?
サラはいつも胸を潰してらしたんですね
気分の優れない様子でしたので
身体を締め付けている様な物や
横になる際に邪魔になりそうな物などは
外させて頂きましたよ?」
『え?あ?色々とありがとう…
うん…一応男子校だし…
目立たない様に…ね…』
「そうですか…人間って…いや…
女性って何かと不便なんですね」
『まぁ、コレが人間界の女性共通の悩み
ではないけど…君たちは…
珊瑚の海出身だもんね』
「サラ…貴方何故それを?」
『ん?君たち3人を見てたらさぁ
旧知の仲かと思ってね…
アズールは珊瑚の海出身だから貴方達2人も
必然的に…ね?』
「貴方だってアズールとは……」
ジェイドのその言葉に俯いてしまった…
『…私は忘れ去られた存在だから……ね?』
顔を上げ精一杯の笑顔を向ける
ジェイドは一瞬驚いた表情を見せたものの
目を細めクスッと笑い
目が輝きを持ち始めた…