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ケルピー先生【短編集/BL/R18/twst】

第2章 ケルピー先生の小遣い稼ぎ【クルーウェル先生】


聞き捨てならないことを聞いた。
好いた相手?
誰が、誰を、好いていると?

「俺が、お前を、好いていると言ったんだ」
「おいおい、人間。マジで言ってる?ケルピーって知ってる?人食い妖精だぞ?私も何十人か頭から食ってる軍馬だぜ?」
「なるほど、軍馬は冗談だと思っていたがケルピーなら納得だな」
「そこじゃねぇって」

新入生への挨拶時の鉄板ネタとして軍馬でしたと言う本当にあった時代を語ることが多いのだが、今気にするところはそこじゃない。
たかだか三十数年生きただけの人間に好きですと言われている事実に納得がいかない。

「人間が調子に乗るなよ。私を乗りこなそうなど数百年はや、うわ近いっ」

コツコツ靴を鳴らして近付いてきたかと思えば目の前まで端整な顔が迫ってきた。
人間のくせにすこぶる顔がいいクルーウェルに近づかれると思わず怯んでしまう。
メイクをバッチリ決めた顔が鼻先にあるのだ。

「本当は蘇った泉の前で言おうと思っていたのだが、仕方あるまい」

プロポーズプランまで決めないで欲しい。
人を食べたこともある、世界中を旅したこともある、人とそれなりに関わったこともある。
でも所詮は泉の妖。
恋愛など初心者どころか御伽噺の存在だと思っている私になにをしようというのだ。

「フォーンス先生」

ぞわり、と全身が栗毛立った。
クルーウェルがユニバーシティにいた時にたまたま出会ったあの頃を思い出す。
あの時はたまたま非常勤講師としてユニバーシティにいて、クルーウェルは私のことを"先生"と呼んだのだ。

「貴方の毛並に、出会った時から恋をしていた。エクウスと呼んでも?」
「ク、クルーウェル、ちょっと離れて」
「デイヴィス」
「いや呼び名なんてどうとでも」
「デ イ ヴ ィ ス」

教え込むように唇を動かされ、口端が引きつった。
いつの間にか壁際まで追い込まれ、両側に腕を突かれてしまった。
逃げようと思えば逃げ出せるが、クルーウェルを傷付けてしまう危険性もある。

「おいたが過ぎる」
「エクウスが名を呼んでくれれば一先ず退こう」

目がマジである。
そんなに呼んで欲しいものなのか?
ケルピーは皆名前などなく、私は泉を出る時に便利だからと適当に自分の名を決めたぐらいなのに。

「ほら、俺の名を呼べ」

もう駄目だ。
完全に目が躾モードだ。
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