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ケルピー先生【短編集/BL/R18/twst】

第2章 ケルピー先生の小遣い稼ぎ【クルーウェル先生】


本当に信じられないのだろう。
唖然とした様子で角を見つめた。
何だったらこの場で本来の姿に戻ってもいいのだが、肺呼吸からエラ呼吸になるのでとても辛い。

「にわかには信じられんが……この角の量を見る限り本当なのだろう」
「偽物じゃないのは分かるだろう?」
「これほど美しい角を間違えたりしない」

十本とも綺麗に折れた角ばかりだ。
上手く折れたものを厳選して後で茨の谷の王に献上しようとしていたモノの一部である。
あの谷は手土産なしに帰るには少々陰湿すぎるし。

「ただクルーウェルに譲るかどうかは別の話でな」
「……いくらだ」
「金もそうなんだが、使い道を聞きたい。自分の角がどうなるかぐらい知っていても良いだろう?」

理由によってはお安くしよう。
ニヤリとニヒルに笑った私を見てクルーウェルが溜息をついた。

「お前、聖水が欲しいと言っていたろう」
「ああ」
「ナイトレイブンカレッジの校内にも元聖水の泉があってな。そこを浄化しようと思ったんだ」
「え?自惚れでなければ私のためにしようとしているように聞こえたのだが」
「だから言いたくなかったのだ」

勿論、私も元聖水の泉は知っている。
角が十本もあれば見事に蘇らせるだろうが、面倒なのでそうしないで来た。
故郷のケルピー達が送ってくれる聖水で何とかなっていたし、長年の生活で聖水から離れていても多少は大丈夫だからだ。

好物の聖水がある方が有り難いと言えばそうだが、学園に負担はかけられない。
ケルピーの角は売ってしまった方が利があるし、何より面倒くさかったのである。

「先日具合が悪かった時、聖水がないから具合が悪いとお前は答えた」
「あ、あー……丁度聖水を切らしていた時だな。今は譲ってもらった物があるが」
「今となってはお前がケルピーだから聖水に固執していたのだと分かったが……まあいい。とにかく浄化するために必要なのだ」

どうやら気を遣わせてしまったらしい。
授業で使う聖水を取り寄せるより場所があった方がいいと考えていた時に私の発言を聞いたため、どうせならと浄化に乗り出したらしいのだ。
まさか浄化にケルピーの角がこんなに必要だとは思わなかったようだが。

「随分とお優しいことだな」
「好いた相手が不調だというのだ。手を尽くすぐらいする」
「ほほーん……ん?今なんて?」
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