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ケルピー先生【短編集/BL/R18/twst】

第2章 ケルピー先生の小遣い稼ぎ【クルーウェル先生】


「分かった、分かったから。デイヴィス、退いてくれ」
「……チッ」

今舌打ちしたぞこの小僧。
私の返答が少しでも遅かったら難癖付けて躾けるつもりだったなコイツ。

「まったく心臓に悪い。老骨をいたわる気持ちはないのか」
「あと数百年は生きそうな妖精が何を言う」

一応約束は守るつもりなのかさっさと離れ、麻袋を詰め直し始めた。
クルーウェルが私を恋愛的意味で好きかどうかはもう考えたくないので端に寄せる。
じじいには面倒くさい話題だ。
それよりも気になるのは泉を復活させる話だ。

「私への手土産に聖水の泉とは殊勝なことだが、それなら聖水を取り寄せた方が安上がりだっただろう」
「その日のエクウスの占い内容が"高価なものほど吉"だったのでな。取り寄せるだけではお前を落せないと判断した」
「私のせいか……」

自ら墓穴を掘っていくとはこのことである。
さらっと名前呼びで継続しているし。
一癖も二癖もある生徒を日々相手しているだけある。

「私をモノにしたいのならくつわでも噛ませるんだな」
「ほう。では次からはそうしよう」
「ただ気を付けろよ」

ケルピーはくつわを噛ませれば大人しくなる。
しかし、彼等を大切にしないものは酷く恨み、呪術で相手を末代まで呪うのだ。

「水辺ならうっかり頭から食べ、くつわをされたらうっかり呪殺してしまうやもしれん」

これは脅しでもなんでもなく、事実である。
ケルピーの本能故に自制などない。

「望むところだ。噛み付かなくなるまで躾ける」
「せいぜい乗りこなして見せろ」

早くこの場から立ち去ろう。
でないと適当な布を引っ掴んでくつわにされて押し倒されるまで未来が見える。
今日の星巡りは怪しいと思っていたが、まさかこんな形で警告を目の当たりにすると思わなかった。

つい調子に乗って強気に出てしまった所為でクルーウェルの目が怖い。
躾のなっていない犬、もとい馬をどうにかしようとしている雰囲気だ。
いや、私は犬にもなれるからあながち間違っていないのだけれど。

「首輪をかける日が楽しみだ」

楽しそうに笑ったクルーウェルの横顔を最後にそそくさと準備室を離れた。

――翌日から大っぴらにまとわりつかれたり愛を囁かれたりして大変迷惑を被るのは別のお話。
ちなみに学園長は愛のなせる業だからオールOKだとか。
アイツは後でしばく。
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