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ケルピー先生【短編集/BL/R18/twst】

第2章 ケルピー先生の小遣い稼ぎ【クルーウェル先生】


学園長室からの帰りしな、更に十本の角が入った麻袋をもって再びクルーウェルのいる準備室へと向かった。

「クルーウェル、いるかー」
「ステイ!うるさいぞ、フォーンス!」
「おっと失礼」

彼は丁度、一人の生徒に指導をしている最中であった。
1年A組の生徒、何かと話題に上がる監督生のようだ。
いつも小うるさいグリムという魔獣を連れていると思ったが、今日は一人でここに来たらしい。

「あ、フォーンス先生」
「やあユウ君。邪魔してしまって申し訳ない」
「いえ、質問したいことは聞けたので大丈夫ですよ」

退室するところだったのだとこちらに近寄ってくる監督生は急いでいるようだ。

「グリムをエースとデュースに預けてきたので、大丈夫だとは思うのんですけど心配なんです」
「暴れる前に追いつくと良いね」
「はい!失礼します!」

すたすた軽快な足音を立てて去って行く監督生を見送り、クルーウェルへ振り向いた。
彼は呆れたようにこちらを見て、手に持っている麻袋を指示棒で指し示す。

「で、要件はそれか」
「ああそうそう。コイツを届けに来たんだ」

ドサッと乱雑に机の上に放った麻袋をクルーウェルが見つめ、促されるままに中を確認した。
最初こそ訝し気に袋を見ていたが、中を見た途端に優雅な彼には想像もつかないほど目を見開き、ぱくぱくと口を開いた。

「こ、これ!」
「ケルピーの角十本セットだ」
「どうやって手に入れた!」
「折った」
「おっ、折った!?ケルピーから!?」
「そう」

信じられないものを見る目でこちらを見つめている。
そりゃあ信じられないだろう。
ホリデーでもバケーションでも茨の谷へは帰らなかった。
寧ろ旅行に行っていたほどだ。
入手元が気になる気持ちもわかる。

「本当にケルピーから折ったなら密輸だぞ」
「いいや、自身の角を折る場合は密輸ではなくただのお手入れ。自分の体の一部を商売に使うとしてもそれは私自身の善意であって、茨の谷は関係ない」
「はぁ……?その話を鵜呑みにするならお前はケルピーと言うことになる」
「だからそうだって言っているんだが」
「は!?」

彼のご自慢の毛皮のコートがずり落ちた。
そんなに衝撃的な事実だろうか。

「妖精は妖精でもケルピーの末裔、なんだ。角もある」
「角突きのケルピー?お前が?」
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