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ケルピー先生【短編集/BL/R18/twst】

第2章 ケルピー先生の小遣い稼ぎ【クルーウェル先生】


「ちなみに何本欲している」
「なぜそこまでお前に教えなければならん」
「まあいいだろう?ただの興味本位さ」

ひらひらと片付けたタロットを振れば、彼は諦めたように両手を差し出して全ての指をこちらに見せた。
流石の私も頬が引きつる。

「まさか十本?」
「そうだ」
「何百万マドルになるか分からないぞ」
「だが十本必要なのだから仕方ない」

紅い手袋が生徒たちに配るのであろうプリントに移り、それが嘘ではないことを知る。
茨の谷でも年に数十本しか取れないケルピーの角を一度に十本使う魔法薬など存在しない。
大量に何か作る気なのか……?

「流石に使い道が気になる。個人的では片付けられない量だ」
「お前には教えない」

本当に教える気はないようだ。
ナイトレイブンカレッジの教師歴はこちらの方が少々長いというのにあの態度。
だがしかし、知られたくないことに使うのなら問い詰めても答えは出ないだろう。

「ふむ、そうか。まあせいぜい交渉するがいい」

恐らく学園長は頷かないだろうけれど。
十本なんて突飛な数、金があっても茨の谷側が売ってくれない。
様々な国の必要な機関に、特に教育機関に優先的に売っているのだからなおのことだ。
ちまちま一本ずつ集めるならまだしも一気に十本なんて。

「そういえば、フォーンスは茨の谷出身だったか」
「だからなんだ」
「本物のケルピーには会ったことがあるか?」
「もちろんあるが、何故」
「いや、そうか」

煮え切らない態度で再び作業に戻ってしまったクルーウェルは何かを悩むような顔をしていた。
クルーウェルには、というより学園長以外には自分の種族を明かしていない。
茨の谷出身の妖精の末裔だと言えば大抵はそれで片付いてしまう。
まさか末裔どころか妖精本人でケルピーだとは思ってもいないだろう。

クルーウェルの質問に正確に答えるのなら、ケルピーに会うどころか一族全員ケルピーですが?ということになる。
彼等は茨の谷の聖水で満たされた泉に生息しており、他の場所には出没しない。
他の場所にいるとすれば、それは聖水で満たされた水場の新たな発見だ。

「……ケルピーは聖水にしか生息しない。合っているな」
「当然だ。他の場所では息苦しくて生活できん」

クルーウェルの質問は意味こそ分からないが、一応正確に回答した。
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