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ケルピー先生【短編集/BL/R18/twst】

第4章 海のインテリと泉の先生【オクタヴィネル寮】


オクタヴィネル寮が運営するモストロ・ラウンジ。
質の良い料理と人魚の多いオクタヴィネル寮独特の海らしい雰囲気を持ったケルピーにとって絶妙に居心地の良い場所。
週1で夕食をとりに行くことにしている私は金曜日の夜、モストロ・ラウンジへと足を踏み入れた。

「あれぇ?シーホース先生じゃぁん。食べに来たのぉ?」
「やあフロイド君。晩御飯をね。適当に見繕ってくれるかな」
「いいよぉ。好きなところ座って」

ホールに出ていたフロイドが楽しそうに絡んできたが、今日は機嫌がいい日らしい。
彼曰く、私はタツノオトシゴ。
言い辛いとのことでシーホース先生と呼ばれていた。
オクタヴィネル寮のある地域、海辺を泳ぐ際に代価として真の姿を見せたのだが、それ以来シーホース先生で通っている。

「これはこれは。アハ・イシュケ先生」
「アズール君じゃないか。オーナー直々とは珍しい。どうしたんだい?」

海辺に住む同族、アハ・イシュケと呼ぶのはオクタヴィネル寮長のアズール・アーシェングロッド。
努力家で真面目な子だが、少々商いに対する情熱が凄まじい生徒だ。
私の種族はとても商売になるので度々こうして絡んでくる。

「学園長を困らせた希代の天才が凡夫になに用かな?」
「凡夫だなんてご謙遜を!栄光あるナイトレイブンカレッジに勤める講師に才がないはずがありません」

綺麗に整えられたソファーに座り、足を組んで座る私の前に彼は笑顔を携えて座した。
わざわざ出向く上に目の前に座るのだから、当然何かしらの交渉に来たのだろう。
タイミングよくフロイドが配膳しに、片割れのジェイドが紅茶を持って来た。

「で、何をお望みかな」
「お話が早くて助かります。先生が先日クルーウェル先生と浄化したという泉の話です」
「ああ、あれか」

流石は耳が早い。
泉の所有者はナイトレイブンカレッジそのものだが、管理自体は私が請け負っている。
準責任者が浄化を行ったクルーウェルだ。
恐らく彼等は先にクルーウェルへ突撃し、空振りに終わったのだろう。

「欲しいのは聖水の汲み取り許可と販売許可か?」
「ええ。その通りです。販売許可、というのは多少語弊があります。モストロ・ラウンジで提供する飲料水と調理水を聖水に変えられないかと考えておりまして」
「ふむ」

アズールの横にジェイドとフロイドが控えた。
先生相手でも容赦しないという構えのようだ。
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