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ケルピー先生【短編集/BL/R18/twst】

第3章 古巣に入り浸る先生【ディアソムニア寮】


もし私の聖水がなくなればリリアが持っている聖水から補充することになっている。
ホリデーに自分の故郷に帰ればよいのだが、あそこに帰ると部下たちの教育に追われてしまうのでいつもゆっくりできない。
結局旅行にでも行こうと帰るのを先延ばしにし、聖水を切らすこともままあるのでリリアには助かっている。
サムから買うこともあるのだけれど、やはり故郷の聖水が一番だ。

「そういえばエクウス、お主の甥っ子に孫が生まれておったぞ」
「あーもうそんなに月日がたったか」
「祝いに行かないのか?」
「泉の連中が祝うだろう。私は祝う気にならんよ」

ケルピーの生まれ方は非常に祝い難い生まれ方だ。
ただのケルピーとして育った連中はただのめでたい同族の生誕なのだが、私にとっては少し違う。
"前の記憶"の所為でとても祝う気持ちにはなれなかった。

「セベクとシルバーはケルピーの生まれ方を知っておるか?」
「いえ、存じません」
「申し訳ございません!」
「まだ習わないから仕方ないさ」

リリアの意地の悪い質問に頭を下げた二人に顔をあげさせ、少しだけ元の姿に戻ってあげた。
全て元に戻るとエラ呼吸になってしまうので足を魚に、手を馬に、たてがみを少し、角を出して、といったケルピーもどきだ。

「ケルピーはこの通りある程度姿を自由に変えられる。人魚と違って変身薬は必要ない」
「ユニーク魔法とは違うのですか」
「これは特性なのでな。魔法とは違う」

足を触りたいというのでヒレを差し出すと興味深げにセベクがふにふにと触ってきた。
陸に住んでいる限りは人魚と触れ合う機会も少ないだろう。
時折オクタヴィネル寮で泳がせてもらっているのであちらで私は人魚と言うことになっているが、見た目だけそっくりなだけ。
ケルピーは海水で泳ぐことを好いてはいない。

「ケルピーは水難にあった人間が未練を残して死ぬことで生まれると言われている。ケルピーが食べてしまった人間を仲間にしているともいえるのだが、まあ要は元人間達の集団なのだ」

その所為で私は"人間だった頃の記憶"があるのだが、それももう昔の話だ。
今となっては些細な記憶、覚えていても忘れてしまっても現実は変わらない。

「だから生まれることを祝う気にならん」
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