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ケルピー先生【短編集/BL/R18/twst】

第3章 古巣に入り浸る先生【ディアソムニア寮】


雑談をしている間にシルバーが切り分けた羊羹と緑茶を持ってきてくれた。
綺麗に切り分けられたソレを口に含もうとフォークを手に取った瞬間。
大きな声が談話室に響き渡った。

「マレウス様!!只今帰還いたしました!!」
「ああ、セベク。リリア。おかえり」
「おーリリア。戻ったか」
「エクウス。来ておったのか」

パクリ、と羊羹を口に含んで手を振るとリリアが嬉しそうに寄ってきた。
同じくセベクが寄ってきているが、訝し気に首を傾げている。

「フォーンス先生が何故ここに……?」
「こやつはディアソムニア寮出身の水妖ケルピーじゃ。お主の先輩にあたるぞ」
「なんと!ケルピー!」
「今年はいってきたマレウス君の側近、セベク・ジグボルトだったか?」

マレウスに確認するように聞くと、緩く首を縦に振った。
非常に声が大きい以外はとても真面目な生徒だと思っている。
占星術と古代呪文語に声の大きさはいらないのだけれど、居眠りもしなければ質問もしてくれる良い生徒だ。

「ここでは先生で構わない。寮にいるときは昔の階級で呼んでくれる子も多いが、好きなように接してくれ」
「エクウスは父上の愛馬だったのだが、僕が生まれてからは僕の馬だ。今も召集すれば僕を背に乗せてくれるのだろう」
「お呼びとあらばいつでも馳せ参じる所存。出来れば平和が一番だけどねぇ」

暇を貰っている現在は後任がマレウスの騎馬として存在しているが、馬力は私が勝るのだろう。
マレウスは何かと私に乗りたがる。
ケルピーは戦後のケアをしっかりしないと一族全員で恨んでくるので、かなり丁重に扱われている連中だ。
王族が乗っているのは性能以外にもそういった理由がある。

「エクウス様、バニラアイスが御座いますが付け合わせにいかがでしょう」
「頂こう。マレウスは?」
「僕も貰おう。シルバー、リリアの分も」
「かしこまりました」

椅子を引いて私とマレウスの間に座ったリリアが私の羊羹をつまみ食いし、じろじろと私の装いを観察した。
いつもの事なので特に気にせず、持ち込んだ羊羹を貪っておく。
今日はセベクも加わってよくよく観察されてしまった。

「エクウス、聖水が二つほど減っているようだが大事ないか」
「問題なく。今度学園に聖水の泉ができるのでな」
「おお、それは良いな」

身に着けたガラス玉に籠められた聖水は淡く光を放っている。
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