第4章 終わりのないメランコリー《宮治》
「……暗いな。」
さっきまで練習で使っていた体育館は、陰々とした薄墨色に染まっていた。
部員ひとりいなくなったその空間は、とても部活中と同じ場所とは思えない。いつもは必ずメンバーがいて、ワーワーと喧しくて暑苦しい場所なのに、誰もいなくなった体育館はひっそりとした静寂に包まれている。
窓から射し込む月明かりがぼんやりと辺りを照らし、昼間とは違う幻想的な空間を作り出していた。
二人を探しにきたんやった。
その情景に目を奪われ、本来の目的を忘れかけていたが、突然ふと我に帰った。
『……ぁあっ、!』
どこかから聞こえてきたのは女の声。
どくん。
この声って………
聞こえてきた声はいつも慣れ親しんだもので。
声が聞こえてきた方向へ、音を立てないようゆっくり進む。
『……りん、たろ…ぅ』
どくん。
それは紛れもなく穂花の、恋焦がれる人の声だった。