第5章 患い煩い(家康)
家康は溜め息をついてもう一度夜長を抱き締めた。
「……夜長」
「なに?」
「……もっかい言って」
焦れて掠れた声と熱い身体が、夜長の体温を上げる。
「家康が欲しい。……家康、触れてくれる?」
「触れないと死ぬ」
家康はそう言って更に強く抱きしめ、待てないとばかりに襖に夜長の身体を組み伏せた。
ろくに言葉も交わさず、深く口づける。
薄く開いた夜長の唇を少し舐めた後、最初から熱い吐息と共に舌を侵入させて夜長の舌を絡め取り、吸い上げる。
漏れる甘い吐息を奪い合い、身体もぴたりと合わせて抱き締め合う。
わざと押し付けるように家康が腰を強く引き寄せると、すでに硬くなった物がはっきりとわかり、夜長もその率直な主張に頭が蕩けた。
求められていると分かるだけで身体が火照り、頭が甘く溶けてしまう。
そして家康が「欲しがられたい」と言う気持ちも分かる。
「家康、……あのね……」
「なに……」
口づけながら囁く。
「もっと、じかに触れて欲しい……、なんだか、足りない……」
「……俺はもっと足りない。今夜はあんたが愛らしい程に長く抱いてしまうけど、覚悟して。いくら可愛く言っても離さないから」
不敵ながらも艶めく笑みに夜長は熱に浮かされたような心地になる。
その夜、ふたりは何度も身体を重ね、求めあった。
くったりと眠る夜長の髪を手で梳き、頬を撫でる。
「ほんと、足りない。人の気も知らないで」
あどけない寝顔にため息をつきつつも口元に笑みが浮かぶ。
『家康が欲しい』
『触れてくれる?』
『いっぱい欲しい』
夜長がはばからずに口にしたねだる言葉の数々。
「……意地を張った甲斐があったかな」
家康は小さく零し、やわらかく愛しい温もりを抱き締め、久しぶりに心地の良い眠りに身を任せたのだった。