第2章 近づく距離
かかしサイド
彼女は俺の左胸をさして、真っ黒だといった。
言われた瞬間、何のことかわからなかったが、数秒後にぴんときた。
あー…きっと彼女には俺の心の闇が見えているのか…
案の定、彼女にはそういった何か見える能力が備わっているらしい。
初対面で、俺の大きな部分を見抜かれてしまった。
だが、彼女は特に詮索してくることはなく、また俺たちは無言ですごした。
しばらくして、彼女はもう帰るのであろう、フラフラと立ち上がった。
完全に酔っ払いだ。
「危ないでしょ。…送っていくよ」
思ったよりも彼女は素直に了承した。
急ぐわけでもなく、何かを一生懸命話すわけでもなく、おれと彼女はゆっくり里を歩いた。
彼女は同じく忍びで、サキというらしい。
サキは俺からすると小柄で、きれいな黒髪をした独特の雰囲気のある子だった。
切れ長の目は、気だるそうにしているが、俺を見るときは、何か別のものまで見透かすようにじっと見つめてくる。
ま、実際その目で俺の闇をすでに見つけてしまっているんだが…
そして彼女のアパートの前まできた。
素直にお礼を言う彼女にかわいいとおもった。
が、次の瞬間俺は、かたまることになる。
「かかし…初対面でいうのもなんだけどさ…顔…見せてくんない?」
「…!?…な、なんで?」
「なんでって、かかしの顔みたら、なんかもっと感じれるかなって‥思ったから」
まさか初対面で顔を見せてくれといわれるとは思わず、俺はじゃっかん後ずさりした。
俺の何をこれ以上感じるというのか。
疑問も浮かんだが、じっと見つめる彼女に対して、なぜか嫌悪感はいだかなかった。