第4章 サキの術・少年時代2
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記憶のフィルムが流れるように、場面は次々と足早に変わっていく。
なかなかしょっぱなから壮絶な闇だった。
これ1つでも心の傷は深いのに、これからまた何があるというのか…そう思い場面が止まるのを静かに見守る。
ある止まった記憶の場面の1つ…
もうすぐ夕暮れが近い。
数メートル離れた場所にいるのは、木の葉の慰霊碑の前に立つ銀髪の、少し背の伸びた君。
すぐに気配を感じて振り向き、殺気だつ君は、この世の何もかもを信用していないそんな右目だけを私に向けた。
あぁ、この時にはもう左目に写輪眼があるのか…
そう考えていると、君は言った。
「お前……なんか知ってる…」
「かかし」
そう名前を呼んで笑うと、君は驚いたように右目を見開き、殺気をおさめる。
「…サキ…?」
「当たり」
そういって、かかしに近づいていくと君は私から目をそらしうつむいている。
「サキ…俺…」
そう言いだしたかかしの眼にはもう涙がいっぱいで、胸を押さえてしゃがみこんだ。
乱れた呼吸が邪魔して、君の言葉を簡単に遮ってしまう。
少し大きくなった背中も、また大きな大きな暗闇が覆いかぶさっていて、心が痛いよ、苦しいよって君の心が叫んでいた。
かかしの次の苦しみは、またとてつもなく大きくて深い…
「かかし。私が来たってことは、覚えてる?
また特別な時間がやってきたよ。ほら、おいで」
そういって君を抱き寄せる。
君は素直に私の胸の中に納まり、過呼吸にもなりそうな呼吸を、ゆっくり、ゆっくりと整える。
「サキ…俺、もうなんで生きてるかわからない…
俺のせいで…全部俺のせいで、大事な、仲間を、失ったんだ…俺が2人を…殺したんだ…守れなかった…」
何度も何度も繰り返す、俺のせいだと。
後悔、悲しみ、苦しみそして痛み…
耐えきれないほどの真っ黒な思いが、君の体中からあふれて、まるで君の周りに真っ黒な海を作ったようにあふれかえっていた。