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王子と悪徒の異聞奇譚

第1章 夢で見た世界は



――――私は、誰かの助けになりたかった。


「ありがとうッ」

幼い頃にいじめられていた子を助けたのがきっかけだった。
名前も知らない初めて会ったその子は、涙に濡れた笑顔でこう言った。

「まるで王子様みたい」

王子様は男の子しかなれないはずなのに、その言葉が妙に嬉しかった。
私の中の「王子様」は特別な存在だったから。
不幸な境遇にいる人を救い出す希望。

大袈裟だと思うだろうけど子どもは単純。
その日から、私は王子様として生きていくことに決めた。


助けを必要とする人を救うために――――

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