第22章 はじまりの3人
「いがないでぇぇ…!!」
涙がいっぱいあふれて落ちる。視界が水彩絵具に水を垂らしたように滲んで、みんなの顔がぼやけて見えない。笑ってる?怒ってる?みんなも私と同じきもち?
「これナナ、待つんじゃ」
「いやだ!いくなら私も連れてってぇぇ!」
追いかけようとすると、オーキド博士が私の肩に手を置いた。
小さな田舎町で暮らす私にとって、みんなは世界の中心だった。
ポケモン図鑑のために旅に出る?
そんなの知らない。いやだ。絶対にいや。
私の世界からみんながいなくなってしまう。
私だけおいてけぼり。
ひとりぼっち。
そんなのいやだ。
「ナナちゃん、手紙書くから、ね?」
リーフちゃんに頭を撫でられる。優しくて明るい私のおねえちゃん。
だけど、優しくされたらもっと寂しくなる。
もう毎日撫でてもらえないし、遊んでくれなくなるんだ。
「……」
泣き止まない私を見て、レッドが近づいてきた。チラリと隣にいるヒトカゲを見て、なにかを言いたそうにしている。
「さわって…いいの?」
「…うん」
かわいいけど、かみつかれたらどうしよう?
躊躇して空中で手を彷徨わせていると、レッドが笑いながら私の手を掴み、そのままヒトカゲの頭に乗せた。
「わあ、かわいい」
あたま、すべすべだ。
そっとなでなですると、ヒトカゲはキョトンと小首を傾げた。やっぱり、かわいい!
「……!」
くすぐったかったのか、ヒトカゲが体をぷるぷる振るわせると、レッドが私の手を掴んでヒトカゲの頭から離した。「しっぽの炎でやけどしないように気をつけて」って優しく注意される。ヒトカゲにとって大切な火なんだって。
「いいなぁレッド。こんなかわいい子と旅なんて」
「……」
「私も…大きくなったら旅できるって…?」
レッドが頷いた。「だから待ってて」だって。
「いやだ!」
「…!?」
「今がいい!私もみんなと旅する!うわぁぁぁあん!!」
それまでずっとひとりぼっちなんて嫌だ。それに旅に出たら、みんな遠くに行って一生帰ってこないかもしれない!