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蒼き龍の逝きる意味

第8章 遊郭編


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鍵を開け、扉を開ける。
そこはとても静かで、誰も居ないような
そんな錯覚に陥る。

しかし、窓から差し込む月明かりが
一つのベッドを照らしていた。
ゆっくりと近付けばそこに居たのは焰。

煉獄「…………少し、冷たいな。」

優しく頬を撫でると、手に伝わる
ひんやりとした体温。

口に手を近付ければ、弱々しく
手の平に息が当たる。

煉獄「……生きてる。」

膝を折り、床に膝立ちになる。
ベッドの端に腕を組んで置き、顔を置く。
焰の横顔をジッと見つめる。
起きてくれと、願いながら。

しかし、その願いは届かず
焰は静かに眠っている。

煉獄「………なぁ、どうして
宇髄に怪我の事を言わなかった…。」

ポロッと言葉が出る。
無意識に出たそれは堰を切ったように
次々に溢れてきた。

煉獄「…どうして、自分の体を
優先して留まらなかった。
どうして、…どうして……っ…
俺を頼ってくれなかった…っ!
そんなに俺は、頼りないか…。
まだ柱を引退してないとはいえ、
上弦の参を倒せなかったどころか…
治療せねば危うい程の怪我を負ったからか…っ?」

声が震える。
片方しか見えなくなった視界が滲む。
情けない、嗚呼情けない。
だが、仕方ないだろう。
俺は好いた相手に、頼られなかった。
だが、それもそうだろう………。
噂を信じ数ヶ月前までは酷い仕打ちを
して来た人間なんぞを頼る訳ない…。
けれど、俺の知らぬ間に死にかけて戻ってきた。
泣きたくもなるだろう。

煉獄「…なぁ……っ、起きてくれ…。
俺を見て、俺の名前を呼んでくれ…っ。
目を開けてくれ…………っ…。」

頬を伝う、熱いモノ。
嗚呼、俺は泣いているんだ。

心がこんなにも痛い。
張り裂けてしまいそうだ。
目の前で消えかかっている愛しい人の命。

明日も分からぬ俺達は、
必死に生にしがみつくしかない。

けど、どれだけ態度で表そうとも
行動で想いを表そうとも
この子にはきっと届かない。
いや、気づかないフリをされる。
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