第1章 ピロローグ
それは、感情の無い少年……いや、少女の御伽話。
母に憎まれ、父に疎まれたとある子供は
ある日、炎を宿した羽織を身に纏う男に引き取られる。
毎日の両親からの暴力、暴言、全てから
掬い《救い》出された子供。
男はその子供に愛情をかけて家族として育てた。
しかし、その子供にはある問題があった。
ひとつ、鬼のように鋭い八重歯と細い瞳孔。
ふたつ、あまり自分の事を話したがらない。
そして、人形のように感情が無い。
これは、元からの子供の性格なのか………。
もしや、両親からの虐待の影響なのか………。
それでも、男は子供を愛した。
例え、愛し返されなくても………。
心を開いてくれなくても………。
笑ってくれなくとも………。
「愛しているよ。」
「…………。」
託された羽織、沢山の思い出………。
この子供が笑える………情を取り戻す日が来るのか。
【これは、日本一哀しい家族の御伽話、である。】