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もしも蒼月潮が大人しめの女の子だったら……【うしおととら】

第3章 とどのつまりめんどくさい


 獣の槍を抜いてから数日たった、ある休日。暇だった私はただただ本を読み漁っていた。いつもだったら、一日中絵を描いているところだけど…なぜか今日はインスピレーションがわかない。そのため、何かネタはないかと、ひたすら好きでもない本のページをめくっていたのだ。

 額から汗が伝う。今日はいつもより気温が高いのかもしれない。と、その汗を服の裾で拭った。すぐ真横からため息が聞こえる。

「はあ~あ、もう少しだったのによ……」

「……あの、暑いんですけど……」

「わざと暑くしてるに決まってんだろ」

「…………んん…」

 私の隣でぴったりくっついて、じっとこちらを見つめる妖怪。彼は、うちの寺の蔵に500年もの間はりつけにされていた人喰い妖怪だそうだ。私を食べようとしているようだけど、こいつを繋ぎ止めていた獣の槍がそうはさせないようで…今のところは食べられないですんでいる。

「…とら…そろそろ頭がくらくらしてきたんだけど……」

「おーおー、そのままぶっ倒れて大人しくわしに食われちまえ。そんな物騒な槍なんざ外へ捨てちまってよ!」

 どうやらこの妖怪、石喰いを倒した日に私の汗を舐めたことでおやつ程度にはお腹がみたされることを学習したようで、それ以来、何かとこうくっついてくることが多くなった。

 とらみたいな妖怪は、暑さや寒さを感じることはないようで、結果的には私だけが汗を流してしまい、とらのお腹はどんどん満たされていく。最近では、授業中や体育後、寝ている時までくっついてくるので、悩みの種になりつつあるのだ。

「はー……父さんにクーラーでも買ってもらうかなあ…」

「くーらー?、なんだそれは」

「とらがいくらくっついても暑さを感じることがなくなるような代物だよ…暑い…」

「なにー!そんなもの持ってきたら許さんぞコラッ」

「どーしよーかなー……」

 ポトリと、汗が太ももに落ちる。嫌な予感がして、慌てて拭おうとするが時すでに遅し。生暖かい物体が足の上をねっとりと這う。

 ぬらッ…

「いやあっっ!!変態…!!」

「へっへっへっ今のは油断したおめーが悪いなー!!」

 顔を真っ赤にして怒って見せるが、とらにはまったく響いていない。逆に、相手の加虐心をくすぐっただけだったようだ。

「おいうしおー、また垂れてきてるぞ?拭ってやろうか?わしの舌で!」

「やめて!!」
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