第2章 IFストーリー 蝶と嘘つき狐 【注意:悲恋要素あり】
光秀は少しだけ目を見開いたがそのことをしのぶに分からないように直ぐに元通りの顔になった。しかし、頬に手を当てたしのぶの手に自身の手を重ねて呟いた。
「…少しだけ、このままで居させてくれ。…頼む。」
しのぶの瞳を静かに見つめて呟いた光秀は湧き上がる感情を留めることに必死だった。
「…はい、気が済むまでどうぞ。」
しのぶは彼を見つめて、微笑みながらもその瞳は悲しさを表していた。三日月が二人を照らし続けていた。
その場には静寂と決して伝える事のできない思いに別れを告げる事の出来ない、嘘つきな狐の心を覆い隠す様に蝶が佇んでいた。
知りたくなかった、思いだった。
知りたくなかった、感情だった。
知りたくなかった、………恋だった。
ただ、夢を見たかった。
胡蝶之夢を…
君と共に居ることの許される夢を。
嘘つき狐は蝶の下にはいけなかった。