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番外編の蝶姫

第2章 IFストーリー 蝶と嘘つき狐 【注意:悲恋要素あり】


光秀は知りたくなかった。知らないふりをした。自身に芽生えるこの感情の名を。

「…御館様がお望みならそのようにすれば宜しいのでは?……それでは、要件は済みましたので失礼致します。」

そう言うと光秀は信長に頭を下げたあと、天守閣から去った。信長の呟きにも気付かずに。

「…いい加減、認めろ、光秀。此れでは、俺がしのぶを諦めた意味が無いではないか。」



そうして時は過ぎていき、例の密売商人を捕まえることに成功した織田軍は、それを主導していた、男とその妻に断罪を下すために、縄で縛り庭に連れてこさせた。男の方は丁度縁側に腰掛けていた信長を睨みつけ、女の方は裏切った光秀に目を血走らせながら睨みつけた。

「くそっ…離せ!俺に触るんじゃねぇ…!!」

男は抑えつけている織田軍の家臣に殴りかかろうとしたが抵抗虚しく、叩きのめされる。一方、女の方は光秀を睨みつけながら恨み言のように叫び散らした。

「…クソ男!!あれほど、愛してると言った癖にこの仕打ちか!!!」

それを聞いた光秀はただ淡々と事実を述べるように女に近づき、目の前で呟いた。

「…お前の様な、女など愛した事は一度もない。…これ以上喚くな、騒々しい。」

それを聞いて女は癇癪を起こしたが家臣たちによって取り抑えさえられた。その時に女が泣き叫びながら言った言葉の数々は聞くに耐えないものばかりであった。

「…この、クズ野郎!!嘘つき狐が…!死ね、死んでしまえ!!!」

「………。」

光秀はただ無表情でその女が家臣たちに連れて行かれるのを見ていた。




光秀は漸く長い任務から開放されて、少しだけゆったりと寛ぐ事が出来た。自室から出て、一人で酒を飲みながら月を見ていると足音が聞こえた。振り返るとそこには自身が欲してやまなかったあの蝶の少女がいた。

「あら、今日は香の匂いがしませんね。…漸く終わったんですか?」

しのぶは光秀の隣に腰掛けて月を見上げた。

「…ああ、今日は終った。」

光秀のその言い方は次も有るのだとしのぶに告げていた。勿論その意を汲み取ったしのぶは彼の方を向いて、心配そうな顔をした。

「…一体いつまでこんなこと続けるんですか?」

「御館様が天下を取られるまでだ。…それまでは辞めるわけにはいかないな。」

光秀が自著気味に笑うとしのぶは彼の頬に手を伸ばす。

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