第3章 繰り返されるは悲劇か
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850年某日 トロスト区襲撃
第104期訓練兵卒業の日、トロスト区は地獄と化した。
再び、姿を現した超大型巨人により、トロスト区の門に穴が開けられ、大量の巨人が侵入。
5年前と同じ事態が民衆を襲った。
駆り出されたのは駐屯兵団だけではなく、今日卒業するはずだった彼等もまた然り。
まだまだ未熟なままの彼等は覚悟を決める暇もなく、戦場へと繰り出される事を余儀なくされた。
震える手で立体機動装置を装着し、ガスを補充する。
その様子の中で、第104期訓練兵はパニックに陥っていた。嘔吐する者、頭を抱え泣き叫ぶ者。彼等は恐怖のオーラに覆われた。
先程目の当たりにした脅威に今から立ち向かう。
考えるだけで体が震え出す兵士達。5年前の惨劇を繰り返すまいという想いと裏腹に、恐怖に身体は正直で。
このまま時が止まればいいのに、そう願っても時は進んでいくばかりだ。
?「ククッ、ク、最っ悪だねえ〜」
その様子を一つの影がただ眺めていた。
二つに結んだ黒髪の毛先をクルクルと指で遊び薄く笑いを浮かべて、無様な兵士達を楽し見ながら傍観する。
それをずっと眺めていたかったが、彼女にもタイムリミットが迫っているよう。
?「いっちょガスでも補給するかねえ」
自分の腰に付けられた立体機動装置を撫でて、ガスの保管場所へと気だるそうに向かった。
?「さあ。生き残るのは誰か。」
この事態に、口元に不敵な笑みを浮かべ、呑気に口笛を吹くのは、きっと後にも先にも彼女しか居ないだろう。
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