第8章 現れるはずのない助っ人
だ、大丈夫大丈夫!芸人はイジられてなんぼだ。
むしろスルーされる方が辛い。
とりあえず午後の仕事に行くためにマンションを出ると、マンション前には複数の記者達が待機していた。
ずっといたの?!うわぁ……
「さん!こんにちは」
「あ、どうも……」
「記事はご覧になりました?」
「あの、すみませんが住民の方のご迷惑になりますんで申し訳ないですが、ここで待機しないで頂けますでしょうか……」
「お話聞いたら帰りますので」
「そういうのじゃないので、誤解なので。ノリっていうかなんていうか」
「さんはその場のノリだったということですか?」
「まぁあの、芸人遊びの延長といいますか」
言い訳が苦しい!!
「白膠木さんは本気のようですが?」
「はい?」
「オオサカで白膠木さん御本人に取材させて頂いたんですがお付き合いされているとの事でしたが」
「はひ?」
「さんはお付き合いされていないという認識なのでしょうか?」
は?どゆこと?
簓さん何言ってんの??
ウケ狙ったの?え!俺なんて言えばいいの!?
「さ、簓さんに話しておきます!すみませぇぇぇぇぇぇん!」
「さんもう少しお話を聞かせてくださいー!」
記者達の円陣から慌てて抜け出した。
もう無理!俺口喧嘩とかこういうの苦手なんだよ!
急いでタクシーを探しに住宅街を抜け大通りに飛び出した。
後ろを振り向くとまだマスコミは追いかけてくる。
ひぃぃぃタクシーー!!
道路ぎりぎりに立ってみるも空車は来ない。
もう少し場所を変えようと走った、とにかく走った。
ガーメントバックを脇に抱えて息を切らした、空車のタクシー探しながら。
もうダメ……、体力つけときゃ良かった。
「はあ、はあ、はあ、簓さんのアホー!」
その横で自分を抜かした白いアルファードが30m先で停車した。
記者の車にしては高級すぎる。
俺はそれを通りすぎようとした時、クラクションが2回鳴った。
「!乗りぃ!」
既に窓の空いた助手席から緑色の頭見えた。
「簓さん!?」
後ろからは記者がまだ追いかけて来ている。
いやしつこくないか!?
考える時間はない、慌てて後部座席に乗り込んだ。
走り出した車、俺はパニックだ。